花岡大学
[2020年5月18日]
あなたは大淀町ゆかりの児童文学者・花岡大学(はなおかだいがく)を知っていますか?
ここでは、花岡大学に関する大淀町のとりくみなどをご紹介します。
花岡大学(1909-1988)は、私達のまち大淀町が生んだ、偉大な文学者・郷土史家のひとりです。仏教をテーマにした童話作品を数多く生み出したことで、わが国の児童文学史にもその名をとどめています。
1909(明治42)年2月6日に父・大雄、母・チクの次男として大阪市で生まれ、2歳から16歳までの幼少年時代を郷里の佐名伝・浄迎寺(当時は宇智郡大阿太村に属していました)で過ごし、阿田小学校、五條中学校を経て、1927(昭和)年から1932(昭和7)年までの間、龍谷大学予科から文学部史学科に学び、西本願寺で得度しました。大学の卒業論文は「足利義政の研究」でした。
その後、浄迎寺住職でもあった父の後を継ぐことになりますが、僧籍に身を置きながらも文学の道を志し、作家としての才能を磨きました。1933(昭和8)年、24歳の時、自費出版でデビュー作『魑魅魍魎(ちみもうりょう)』を刊行(この頃は、「大岳」をペンネームにしていました)。
この年、妻・千代子と結婚。26歳から27歳まで、大阪府南河内郡天野小学校の代用教員を勤めながら童話作家連盟を結成し、同人誌「童話作家」を発行しました。続いて大阪府布施第三小学校訓導として勤務し、翌年臨時召集を受けて入隊。ここで、東大寺長老を務めた清水公照師(1911-1999)と親交を持ち、以後、終生にわたり交友を深めました。
1940(昭和15)年、天王寺中学校で2年間教諭。1942(昭和17)年、再び臨時召集で中国を転戦し、1946(昭和21)年山口県仙崎港に復員。翌年からは県立吉野女学校(現在の県立大淀高等学校)で教鞭をとり、1964(昭和39)年で退職するまでの17年間に、数多くの創作童話を世に送り出しました。
1948(昭和23)年にはNHKラジオ放送の連続劇「清願寺の子どもたち」が始まり、翌年棟方志功(1903-1975)の装丁による『花ぬすっと』を百華苑から出版。以後、長編『みどりのランプ』(1959年)、短篇集『かたすみの満月』(1959年。小川未明文学賞の奨励賞受賞)、長編『ゆうやけ学校』(1961年。小学館文学賞を受章)と、活発な創作活動のかたわら、1960(昭和35)年には、川村たかし(1931-2010)らとともに近畿児童文化協会を結成。機関紙『近畿児童文化』を発刊しました。
精力的な創作活動の一方、大淀高校歴史研究部の顧問としての活動も、並々ならぬものがあります。
1956(昭和31)年には吉野史談会を設立し、郷土吉野をテーマにした機関誌『吉野風土記』(1956-1968)の編集を開始しました(以後、第30巻まで刊行)。『吉野風土記』は、総勢約500名の執筆者が吉野地域の自然・歴史・文化をまとめたものです。なかでも、数多くの人々へのアンケート、著名人からのメッセージを載せた「第3巻:大峯論争(1957)」や、交流のあった福田定一(1923-1996。後の司馬遼太郎。当時は産経新聞の記者でした)のよせた文章も掲載されており、郷土文芸誌の歴史に残る貴重な雑誌です。
1966(昭和41)年からは京都深草に居を構え、京都女子大学助教授、龍谷大学・大谷大学の非常勤講師を勤めました。同年『妙好人清九郎』を百華苑から刊行。1968(昭和43)年には幼年文学懇話会を結成し、「すねいる」を発刊(1973年まで)。その後、1971(昭和46)年に京都女子大学教授に就任。児童文学者として学会を指導するかたわら、民話や説話への関心を深め、1973(昭和48)に刊行された『大淀町史』文学編「大淀町の伝説と昔話」の担当として、町内に残っていた説話をまとめました。この頃からブッダの生前の物語である本生譚(ほんしょうたん)(ジャータカ)などの仏教説話をもとにした<仏典童話(ぶってんどうわ)>の執筆を始めます。
1973(昭和48)からは、これまでかかわってきたさまざまな組織や団体からも退き、個人雑誌『まゆーら』(1989年まで)の執筆を始めました。「がまぼとけ」や「世界一の石の塔」、「月」シリーズ(後に「春風の子どもたち」として映画化されました)など、晩年を代表する名作が掲載されました(『まゆーら』は、1988年3月の第92号から千恵子夫人が編集者となり、第100号まで刊行されました)。
1974(昭和49)年に京都女子大学を定年退職後、奈良文化女子短大の教授となり、1977(昭和52)年に第1回正力松太郎賞を受賞。1980(昭和55)年には本願寺派教学助成財団名誉総裁賞を受賞。1986(昭和61)年には、梨山がひろがる佐名伝の大阿太高原に、名作「百羽のツル」の一節を刻んだ「花岡大学童話碑」が、清水公照師の揮毫を得て建立されました。
そして、その2年後の1988(昭和63)年1月29日、79歳の生涯をとじました。今も、地元佐名伝の墓地にひっそりと眠っています。
1987(昭和62)年には、龍谷大学深草学舎図書館に寄贈図書による「花岡文庫」が開設され、1997(平成9)年に開館した大淀町立図書館にも、花岡大学についての図書を集めたコーナーが設けられています。
生誕100年の節目となった2009(平成21)年度、そして生誕110年を迎えた2019(令和元)年度には、大淀町文化会館等で記念事業が催され、より多くの方々の心に花岡大学の作品とその魅力が広がりつつあります。
花岡大学さんは高い文学性をもった童話を数多く執筆し、仏教経典に基づいた仏典童話という分野を確立しました。
子どもにやさしい心や命の大切さを伝える大学さんの作品は、国語の教科書にも取り上げられてきましたが、最近では、町内でも若い人たちは、大学さんの作品を知る人が殆どいなくなってきています。
そのため生誕100年の記念となる年に、(1)大学さんの業績を知ってもらう、(2)作品を音読する、(3)朗読する、(4)朗読を見る、(5)朗読を聞く等、いろいろなやり方を通して、町民のみなさんに認識してもらうようために、できるだけ多くの町民のみなさんや大学さんが教鞭を執った町内の高等学校などゆかりの方々等に関わってもらいながら、「花岡大学生誕100年展」、「みんなで朗読する会」、「幼稚園・保育園児のための朗読鑑賞会」、「朗読を聞く会」、「あるく会とワークショップ」、「童話パンフレット」、「朗読DVD制作」等を実施しました。
特に、大学さんの代表作「百羽のツル」にちなんで、町民のみなさんに町民の人口分(20000羽余り)を目標に折り鶴を折ってもらい、「花岡大学100年展」会場に飾りました。
※この事業の内容は、花岡大学生誕100年記念事業実行委員会編『文化庁【地域文化芸術プラン】 花岡大学生誕100年記念事業~大学さんの人と文学~ 記録集』(2010年3月)に収録されています。
※みんなで作ったパンフレットの朗読DVDはとても楽しく、花岡大学さんの作品にふれることができると好評を得ています。また、今後もこういったものを作れる可能性が見えました。
※来場者から、会場と折り鶴が一体化してとても感じのいい展示会場になっているという声を多数いただきました。
※大学さんの著書の多さに驚かれる人が多く、大学さんの偉業を会場で体感してもらうことができました。
※大学さんの教え子が来場し、作品のすばらしさを異口同音に話されました。なかには、主宰する朗読会で「百羽の鶴」を朗読したい等、もっと作品に触れる機会をつくりたいというお話をされる方もありました。
※大学さんの作品を知ってもらう好機となりました。案外、保護者より子どもたちのほうが、大学さんを知っていることがわかります。
※子どもたちのイマジネーションを刺激して、会話が弾み、とても楽しい朗読会となりました。また、内容を確かめながらの朗読は、子どもたちの話への集中力と記憶力を高めました。
※映画鑑賞では、会場から笑い声が絶えずもれ、昭和20年代後半から30年代にかけての風景を懐かしむ声とともに、この映画をもっと若い世代にみてもらいたい旨の声が多く寄せられました。
※朗読ボランティアによる朗読は、誰もが気軽に朗読ができることを知ってもらういい機会となりました。
※野呂氏の講演は、大学さんの人柄を、作品を通じて感じてもらうきっかけになりました。
※高校生の朗読劇は、出演者からも大学さんの作品を伝えていくため、是非続けてもらいたいと言う声がありました。みんなで会場を折り鶴で飾り付けました。
※もっと朗読を聞きたいというリクエストがたくさんあがりました。
※大学さんの出身地・佐名伝地区のかつての特産品・生姜を知ってもらうため、町の特産品・しめじとすいとんを具材に「生姜入りすいとん汁」をふるまいました。子どもから大人まで、からだが温まると好評を得ました。
※あるく会は、歩いて大学さんの作品の素地になった佐名伝の風景をみてもらうことで、よりいっそう大学さんの作品に興味をもってもらう機会にと計画しましたが、当日は雨のため、あるく会は中止になりました(また、屋外の燈火会についても雨のため中止になりました)。
時間 午後4時半から
場所 花吉野ガーデンヒルズ第2分館
※花吉野ガーデンヒルズ区のみなさんが中心となって、ワークショップの準備を行ってくれました。
※花岡大学さんの代表作「百羽のツル」を、燈火会の灯りで朗読する計画は、室内で規模を縮小して行いました。とても幻想的で、印象に残る「百羽のツル」になったという声をたくさんいただきました。
※はじめて朗読する子どもは、3月6日、朗読家に指導を受けました。学校で習う音読と違い、何度も読み返し、話の内容をしっかり把握し、人に聞かせる、聞いてもらうといった朗読の練習は、子どもたちにとって、とても興味深いものとなりました。本番では上手に朗読ができ、自信がもて、これからも朗読を続けたいといってくれました。
花岡大学さんの代表作品を掲載しています。ぜひ、ご愛読ください。
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