越部古墳(越部1号墳・2号墳)/越部の古代寺院
[2019年5月14日]
現地へは、近鉄越部駅下車。北へ徒歩10分。
越部川東方の丘陵端には、従来から古墳の存在が知られていましたが、平成9年(1997年)、道路拡張工事にともなう発掘調査の結果、近接する2基の古墳の様相が明らかとなりました。
1号墳は推定径約24m、高さ5.6mの円墳で、石室全長8.3m(玄室長3.6m)、奥壁幅約1.9m、現存の高さ約1.5mの片袖式石室です。2号墳は推定径約16mの円墳で、石室全長4.8m(玄室長3.1m)、幅約1.6m、現存の高さ約1.4mの片袖式石室です。
両者ともに玄門部(石室の入口部分)に縦長の袖石をもちいていました。これは、吉野川(紀ノ川)流域の古墳の特徴といえます。
なお1号墳では、装飾大刀の柄尻部分にあたる「金銅製単鳳環頭柄頭」が発見されています。
これらの古墳の被葬者は、みつかった副葬品のようすからも、6世紀後半から7世紀にかけて造営された、当地の有力集団の長たちと考えられます(この環頭柄頭は現在、奈良県立橿原考古学研究所附属博物館にて常設展示されています)。
越部1号墳(調査時)
越部1号墳出土の環頭柄頭
(奈良県立橿原考古学研究所提供)
越部1号墳(現状)
1号墳からは、平安時代中頃(10世紀後半)の「堂」と書かれた墨書土器もみつかっており、9世紀中頃に成立した『日本霊異記』に記す「越部岡堂」という寺院にかかわる資料として注目されます。
「堂」の字の墨書土器(実測図)
「堂」の字の墨書土器(奈良県立橿原考古学研究所提供)
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